黄昏と百合と骨

【大幅改装中】大学生(になっちゃった)中学生の時に開設した暇ブログ。今は暇じゃない。

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『水の時計』 初野晴



『水の時計』 初野晴


臓器移植をテーマとした寓話ミステリー。著者・初野晴のデビュー作であり、第二十二回横溝正史ミステリ大賞を受賞した作品。
初野晴さんの名前は文芸部でちらほら聞くことがありました。私にははじめましての作家さん。





かつては優等生だったが、今では暴走族幹部に身を落とした少年・高村昴。昴はある日、医師を名乗る芥という男に連れられ、ある廃病院を訪れる。そこには、脳死状態でありながら月明かりの夜にだけ特殊な装置を使って話すことができる少女・葉月がいた。
生きることも死ぬことも許されない「死につづける」だけの彼女は、移植を必要とする人々に自分の全ての臓器を分け与えたいと願い、昴は大金と引き換えにその「運び屋」を引き受けることになる。



というのが冒頭要約。


この小説の上手いところは、解説にもありましたが、オスカー・ワイルドの童話『幸福の王子』のストーリーを下敷きに現代風の寓話として展開されていることでした。昔から絵本で親しんだこの童話のもつかなしみは、幼い私にも少なからず理解できていた気がします。


家族との別れや挫折など辛い過去を背負う昴という少年の心の傷、様々な難病に苦しみ自らの運命を呪う人々やその家族の苦悶、そして身体中の臓器を少しずつなくしてゆく葉月の本当の願い……どうしようもなく、かなしい、人間の生命と心の物語は読後もずっしりと私の胸にしこりのような痛みを残しました。



この作品を読んで痛感したのは、私は現代日本が抱える臓器移植に関する問題を少しも知らないということです。これは恥じるべきことだ。

私も財布の中に、万が一自分が脳死状態になったときに身体中の臓器を譲渡してもよい、という意思表示のカードを忍ばせてはいます。昔コンビニに置いてあるのを見つけて、それ以来持っています。



健康体である私たち、身体の悩みなんてせいぜい、ダイエット中になかなか体重が減らないとか、代謝が良すぎて汗が止まらない(笑)とか、わがままで平和ボケした悩みしか持たない、そんな私たちは、臓器移植を必要とするような人々の苦しみや現状を少しも知らない。

おそらくきっかけがないと関心すら持たない。


今でこそ元気な私たちも、いつ不慮の事故や病気でその健康を失うか分からない。だからこそ 臓器移植に関する日本での問題や、病気で苦しむ人たちが求めるものが何なのかということを、自分たちは蚊帳の外だと思い込んでないがしろにするのは間違いだね。


時間ができたら臓器移植に関する新書を読み漁ってみようと思います。はい。




小説としては、文章はわりと淡々としていて感情表現をたくさん取り入れているわけでもないのに、全体に染み渡る哀愁感漂う独特の雰囲気にやられっぱなしでした。

構成もうまかったけど、昴と葉月の因縁がもう少し劇的なものだったらよかったなぁ……最後まで引っ張った割に「なんだそんなもんか」といったところは少しあった気がする。

暴走族内でのリンチのシーンや、臓器移植や病気の治療に関する場面では、かなり直接的で過激な表現が使われていました。痛い表現を苦手とする私なんかは、そういうところで手に力が入らなくなって電車の中で本を落としてしまった時なんかもありました…弱い(+_+)


それほどに「痛み」とはかけ離れた生活をしているんだなあ自分。幸せ者じゃん。




けして読んでいて楽しい気分になるような本ではありませんが、だんだん高村昴という少年に惹かれていきます。読み応えのある1冊です。臓器移植に興味のある方はぜひ。
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| 初野晴 | 21:08 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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